MotoGP第14戦アラゴンGPは、スペインのモーターランド・アラゴンで決勝レースを行なった。決勝日は前夜から降り続いた雨の影響でウオームアップセッションのスケジュールがディレイに。決勝レースもMoto3クラスとMoto2クラスは予定より遅れてのスタートとなった。Moto3クラスは、ライン上はほぼドライだがウエットパッチが多数残る路面の中で争われ、Moto2クラスは路面状況が改善した中、ドライで争われた。しかし、最終レースのMotoGPクラスは、レース中盤に雨が降り始める波乱のコンディションとなった。
MotoGPクラスは、ホルヘ・ロレンソ(ヤマハYZR-M1)が優勝した。MotoGPクラスの決勝レースは気温18度、路面温度20度。曇り空の下、スタート時点ではドライレース宣言がなされて始まった。
アンドレア・イアンノーネ(ドゥカティGP14)が好スタートで1周目をトップで戻って来るが、イアンノーネは2周目にコースオフ。ぬれたグリーンの上でマシンをコントロールしようとしたものの転倒し、リタイアに終わってしまう。
これでマルク・マルケス(ホンダRC213V)がトップに浮上。ロレンソ、ダニ・ペドロサ(ホンダRC213V)、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハYZR-M1)が続くが、4周目にロッシがコースオフし転倒、リタイアに終わる。トップ争いはマルケス、ロレンソ、ペドロサの3人による争いとなり、マルケスが8周目までリードする。
9周目にロレンソがトップに浮上。僅差でマルケス、ペドロサが続く。レース中盤の12周目の1コーナーでマルケスがロレンソをかわしてトップに立つが、コーナーポストからはホワイトフラッグが掲示される。マルケスとロレンソは何度か順位を入れ替えながら周回を重ねていくが、16周目にレッドクロス旗が掲示され、雨が落ち始める。トップの3人は雨の降り方を見ながら、探り合ってけん制しているかのようにも見えたが、この間にペドロサがトップに立つ。16周目あたりでトップを走る3人のペースが明らかに落ち始め、ロレンソが遅れ始める。
17周を終え、真っ先にピットに入ったのはアレックス・エスパロガロ(フォワード-ヤマハ)。レインタイヤを履いたマシンに乗り換えると、トップ争いの3人を除くライダーが続々とピットイン。このとき単独4番手を走り、トップの3人との差を詰めていたアンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティGP14)が転倒し、リタイアとなる。
トップ争いでは18周を終えてロレンソがピットイン、マルケスとペドロサはそのまま周回を続行。しかし、19周目のコントロールラインを通過した直後のストレート上で、2番手のペドロサが転倒を喫してしまう。この時点でマルケスとロレンソとの差は約32秒。レインタイヤを履いたアレックス・エスパロガロは、マルケスより約4秒早いペースで1周を終えていた。残り周回とタイム差を考慮し、マルケスは20周を終えてもピットに入らず周回を続行するが、この周に転倒を喫してしまう。
これでロレンソがトップに立ち、アレックス・エスパロガロが2番手に浮上。転倒したペドロサとマルケスはマシンを起こして再スタート。ピットに戻ってマシンを乗り換えるが、大きく順位を落としてしまった。
ライバルの脱落により、ロレンソは単独トップをキープして今シーズン初優勝を飾った。2位争いはアレックス・エスパロガロに最終ラップで追いついたカル・クロッチロウ(ドゥカティGP14)の二人による、ゴールラインぎりぎりの接戦となった。僅差でアレックス・エスパロガロが前でチェッカーを受け、MotoGPクラス初表彰台を獲得。3位のクロッチロウは今シーズン初表彰台を獲得した。
4位にはステファン・ブラドル(ホンダRC213V)。接戦の5位争いをブラッドリー・スミス(ヤマハYZR-M1)が制し、ポル・エスパロガロ(ヤマハYZR-M1)が6位。アルバロ・バウティスタ(ホンダRC213V)が7位に入賞した。
ピットインのタイミングでうまくポジションアップに成功した青山 博一(ホンダRCV1000R)が、今シーズンベストフィニッシュとなる8位に入賞。復帰レースのニッキー・ヘイデン(ホンダRCV1000R)が9位、スコット・レディング(ホンダRCV1000R)が10位で続いた。
11位ダニロ・ペトルッチ(ART)、12位アレックス・デ・アンジェリス(フォワード-ヤマハ)が続き、マルケスは13位、ペドロサは14位でチェッカーを受けた。ヨニー・ヘルナンデス(ドゥカティGP14)が15位入賞。
以下、16位にマイケル・ラバティ(PBM)。17位にマイク・デ・ミオ(アビンティア)。18位にブロック・パークス(PBM)。19位にエクトル・バルベラ(ドゥカティGP14)。カレル・アブラハム(ホンダRCV1000R)は3周目にリタイアとなった。
ランキングは、ポイントリーダーのマルケスとランキング2位のペドロサが74ポイント差から75ポイント差に。ペドロサとランキング3位のロッシが1ポイント差から3ポイント差と、上位3名が雨による波乱の影響を受けたことでポイント差に大きな変化はなかった。ただし、ランキング4位のロレンソが優勝したことで、ロッシとロレンソのポイント差は12ポイントに縮まった。
Moto2クラスではマーベリック・ビニャーレス(カレックス)が優勝した。Moto2クラスの決勝レースは、ウエットパッチが一部残るものの、ほぼドライコンディションで争われた。スタートでトップに立ったのはミカ・カーリョ(カレックス)。ビニャーレスが2番手で続き、1周目から後続にややリードを取ってトップ争いを展開していく。カーリョは4周目までトップをキープしたものの、5周目の1コーナーでビニャーレスがトップに浮上する。この時点でトップ集団は6台に絞られ、ビニャーレスの後方では、カーリョ、エステブ・ラバット(カレックス)、ドミニク・アガター(スーター)、ヨハン・ザルコ(ケータハム・スーター)、フランコ・モルビデリ(カレックス)が接戦のポジション争いを展開する。
この間にビニャーレスは後続とのリードを広げることに成功。レース中盤の10周目には2位以下に約2秒6の差をつけてトップを独走する。接戦の2番手争いの中から11周目にラバットが抜け出し、少しずつビニャーレスとの差を縮めていく。最終ラップにはその差を約1秒にまで縮めたが、ビニャーレスの背後まで迫ることはできず、ビニャーレスが今シーズン2勝目を記録した。
2位にラバットが続き、3位争いはザルコと終盤に追い上げたトーマス・ルティ(スーター)が激しい接戦を繰り広げた。21周のレースの19周目、ルティが3番手に浮上。しかし、すぐにザルコが抜き返す。その後もルティは勝負を仕掛けるがもう一度前に出ることはできず、ザルコが前戦に続いて3位表彰台を獲得。僅差の4位にルティが続いた。
その後方の5番手争いも最後まで接戦となり、モルビデリが5位、アガターが6位、カーリョが7位でチェッカーを受けた。8位にジョルディ・トーレス(スーター)。9位にサム・ロウズ(スピードアップ)。10位にマーセル・シュローター(テック3)が続いた。中上 貴晶(カレックス)は、レース序盤にトップ10圏内をキープしていたが、6周目あたりからポジションが後退。15位入賞でレースを終えた。
ラバットがランキングトップをキープ、ランキング2位のカーリョとのポイント差は33ポイントに広がった。
Moto3クラスはロマーノ・フェナティ(KTM)が優勝した。Moto3クラスの決勝レースは当初の予定より25分遅れてスタート。雨は降っていないものの路面には多数のウエットパッチが残り、ライン上はかろうじてドライという状況の中、ほとんどのライダーはスリックタイヤを選択してレースに臨んだ。
好スタートを切ったのはダニー・ケント(ハスクバーナ)だったが、1周目をトップで戻ってきたのはジャック・ミラー(KTM)。ミラーは3周目までレースをリードするが、4周目のバックストレートエンドでアレックス・マルケス(ホンダ)がトップに浮上。続く左16コーナーをマルケスがイン側、ミラーがアウト側で並んで立ち上がろうとする。乾いたラインは1本しかなく、ラインを外せばウエットパッチに乗ってしまうという状況の中、接近した二人は接触。ミラーが転倒してしまう。
これでマルケスがトップとなるが、5周目には再びケントがトップに。しかし、ケントはトップに浮上した直後の1コーナーでオーバーランを喫して後退してしまう。この間にトップに立ったのはアレックス・リンス(ホンダ)。リンスは8周目までトップをキープ。9周目にはマルケスにトップを奪われたものの、すぐにトップの座を奪い返す。ところが、11周目の1コーナーでリンスがマシンを振られてコースオフ。8番手まで後退してしまう。
これでマルケスがトップに立ったが、後方から追い上げてきたフェナティがマルケスに接近。12周目のバックストレートエンドでトップに浮上する。ここからフェナティとマルケスの接戦が展開され、二人は毎周順位を入れ替えながらレース終盤に突入する。フェナティとマルケスが競り合う中、終盤にはケントも加わり3人のバトルに。最終ラップにトップで入ったのはマルケスだったが、バックストレートエンドでフェナティが先行。そのままトップでチェッカーを受け、今シーズン4勝目をマークした。2位にマルケス、3位にケントが僅差で続き、リンスはポジションをばん回して4位でゴール。
5位にヤコブ・コンフェイル(KTM)。6位にアレナ・バスティアニーニ(KTM)。7位にミゲール・オリビエラ(マヒンドラ)。8位にブラッド・ビンダー(マヒンドラ)。9位にニッコロ・アントネッリ(KTM)。10位にアレックス・マスブー(ホンダ)が続いた。ワイルドカード参戦の尾野 弘樹(ホンダ)は終盤トップ10圏内に進出。接戦のバトルの末、11位入賞を果たした。ミラーはピットでマシンを修復後に再スタートを切ったが、終盤で2度目の転倒を喫して3周遅れの27位完走。マルケスとミラーの接触によるアクシデントは、レースディレクションの審議対象になっていたがリザルトに変更はなかった。これにより、マルケスがランキングトップに浮上。ミラーは11ポイント差のランキング2位に後退した。