MotoGP第8戦オランダGPはオランダのアッセンで決勝レースを行なった。ダッチウエザーと呼ばれるように、決勝日のアッセンは天候が急変。Moto3クラスの決勝はドライコンディションで争われたが、Moto2クラスの決勝はスタート直前に雨脚が強まり、スタートディレイ、ウエットでスタートし、レース終盤には路面がドライに変化していく難しいコンディションとなった。さらにMotoGPクラスの決勝前には再び雨が落ち始め、スタートがディレイとなる。ウエットからドライへと変化するコンディションの中、マシンの乗り換えが可能なMotoGPクラスではレインタイヤでスタートし、レース前半にスリックタイヤを履いたマシンに乗り換えて戦うレースとなった。
MotoGPクラスは、マルク・マルケス(ホンダRC213V)が優勝した。MotoGPクラスの決勝レースは、雨のため当初の予定より遅れ、ウエット宣言がなされてスタートした。スタート時点の路面はほぼウエットで、レインタイヤでスタート。マルケスが好スタートでレースをリードし、アンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティGP14)が続いた。
5周を回ったところでマルケス、ドビジオーゾがピットに入り、スリックタイヤを履いたマシンに乗り換える。トップでコースに復帰したマルケスだったが、コース終盤でマシンが振られてランオフエリアに飛び出し、その間にドビジオーゾの先行を許す。ほとんどのライダーがピットに入ってマシンを乗り換え、順位が入れ替わる中、8周目にドビジオーゾがトップに立ち、この時点でドビジオーゾとマルケスの差は約4秒あった。マルケスはその差を周回ごとに少しずつ縮め、レース中盤の14周目にドビジオーゾの背後に迫ると、16周目の最終シケイン進入で前に出てトップに立った。
トップに立ったマルケスはドビジオーゾとの差を周回ごとに広げると、レース終盤には5秒以上とリードを広げ、そのままチェッカー。チェッカーを受ける際にはマシンの上で泳ぐようなパフォーマンスを見せ、開幕8連勝。2002年にグランプリの最高峰クラスがMotoGPクラスとなってからは新記録の8連勝、さらに史上最年少となる8連勝をマルケスは達成した。
ドビジオーゾは最終的に6秒714差の2位でゴール。アメリカズGPに続いて、今シーズン2度目の表彰台を獲得した。ダニ・ペドロサ(ホンダRC213V)とアレックス・エスパロガロ(フォワード-ヤマハ)の二人によって展開された3位争いは中盤までアレックス・エスパロガロがリードしていたものの、ペドロサが終盤に前に出ると引き離して単独3位でゴール。アレックス・エスパロガロも今シーズンベストタイの4位でチェッカーを受けた。
5位にバレンティーノ・ロッシ(ヤマハYZR-M1)が入賞。ロッシはグリッドに向かうサイティングラップでスリックタイヤをチョイスしていたが、サイティングラップを走って再びピットに入ってレインタイヤを装着したマシンに乗り換え、ピットスタートでレースをスタート。序盤は13番手付近を走っていたものの、再びスリックを履いたマシンに乗り換えるとポジションを上げ、最終的に5位でチェッカーを受けた。
6位にアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティGP14)。7位にアルバロ・バウティスタ(ホンダRC213V)。8位にブラッドリー・スミス(ヤマハYZR-M1)。9位にカル・クロッチロウ(ドゥカティGP14)。10位にステファン・ブラドル(ホンダRC213V)が入賞。
ブロック・パークス(PBM)が11位、スコット・レディング(ホンダRCV1000R)は12位に入賞した。ホルヘ・ロレンソ(ヤマハYZR-M1)は、レース序盤は6、7番手を走っていたが、スリックタイヤに履き替えたタイミングで後退。最終的に13位でゴールとなった。カレル・アブラハム(ホンダRCV1000R)が14位、ダニロ・ペトルッチ(ART)が15位に入賞した。
青山 博一(ホンダRCV1000R)は、序盤に6番手付近を走行。他のライダーがピットインし始めたタイミングでは一時トップにつけたが、マシンを乗り換えた後は17、18番手付近で復帰。最終的に16位でゴールとなった。以下、17位にニッキー・ヘイデン(ホンダRCV1000R)。18位にエクトル・バルベラ(アビンティア)。19位にヨニー・ヘルナンデス(ドゥカティGP14)。20位にマイク・デ・ミオ(アビンティア)。21位にマイケル、・ラバティ(PBM)。22位にコーリン・エドワーズ(フォワード-ヤマハ)の順で続いた。ポル・エスパロガロ(ヤマハYZR-M1)は16周目に転倒。再スタートしたものの、ピットに戻ってリタイアとなった。
Moto2クラスはアンソニー・ウエスト(スピードアップ)が優勝した。Moto2クラスの決勝レースは各車がスターティンググリッドに着き始めたころに雨が激しく降り、グリッドに向かっていたエステブ・ラバット(カレックス)が転倒するなど、スタート前から波乱の展開となった。レースはディレイとなり、ラバットはピットに戻ってマシンを修復。再びグリッドに向かってサイティングラップが始まるころには、路面はウエットのままながら空は明るくなっていた。このため、スリックタイヤをチョイスするライダーも現れるなど混乱の中で予定より約20分遅れて、周回数は24周のまま、ウエットレース宣言がなされて決勝がスタートした。
1周目をトップで戻ってきたのはサム・ロウズ(スピードアップ)。シモーネ・コルシ(フォワード・KLX)が2番手で続く。1周目を終わるころには再び雨が落ち始め、スリックを選択したライダーたちの賭けは外れてしまう。
2周目にコルシがトップに立つと、ロウズとの差を徐々に広げていく。序盤の内に雨は上がり、部分的に青空ものぞく安定しない天候の下でレースは続けられる。コルシは、5周目には2番手のロウズに約1秒の差をつけて独走。追うロウズは9周目の5コーナーで転倒。再スタートしたものの、再び10コーナーで転倒を喫してリタイアとなってしまう。これでコルシが大きなリードを取ってトップを独走。序盤の内に3番手にジャンプアップし、ウエット路面を得意とするウエストが2番手に浮上していた。コルシはレース中盤には10秒以上のリードを保っていたものの、12周目の10コーナーで転倒。これでウエストがトップに立つ。フリアン・シモン(カレックス)が2番手、マーベリック・ビニャーレス(カレックス)が3番手で続くが、2番手集団は6台の接戦が展開された。その後、シモンは遅れ、終盤はビニャーレスが2番手をキープ。ミカ・カーリョ(カレックス)が追いつき、ルイス・サロム(ポンス・カレックス)と共に接戦を繰り広げるが、サロムは終盤の20周目に転倒。再スタートしたものの、ポジションを大きく落としてしまう。
終盤までウエスト、ビニャーレス、カーリョの3人によるトップ争いが続き、最後はウエストとビニャーレスの一騎打ちになったものの、ウエストがビニャーレスに勝負をしかけるすきを与えず、優勝を飾った。ウエストの優勝は2003年オランダGPのGP250クラス以来。グランプリ通算2勝目、Moto2クラスでは初優勝となる。また、ウエストの優勝で、今シーズン初めてカレックス以外のマシンが優勝した。
2位にビニャーレス、3位にカーリョが入賞。4位にヨハン・ザルコ(ケータハム・スーター)、5位にアレックス・デ・アンジェリス(スーター)、6位にトーマス・ルティ(スーター)が続き、シモンは7位でゴール。ラバットは8位で走りきり、ポイントリーダーの座をキープ。9位にロレンソ・バルダッサーリ(スーター)、10位にハーフィス・シャハリン(カレックス)の順で続いた。
中上 貴晶(カレックス)はスタート直後の1コーナーで前をふさがれて大きくポジションを落としたが、そこから追い上げて14位入賞を果たした。長島 哲太(TSR)はサイティングラップで転倒、決勝中も11周目に転倒を喫したものの、再スタートして20位でチェッカーを受けた。
Moto3クラスはアレックス・マルケス(ホンダ)が優勝した。Moto3クラスの決勝レースは気温20度、路面温度27度のドライコンディションで争われた。スタートからレースをリードしたのはジャック・ミラー(KTM)。1周目の最終シケインで、ロマーノ・フェナティ(KTM)がコースから飛び出し、その直後にアレナ・バスティアニーニ(KTM)が転倒、リタイアとなる。ミラーは1周目をトップで戻ってきたものの、2周目の1コーナー進入でスリップダウン。マルケスがトップに浮上する。ミラーはマシンを起こして再スタートを試みたものの、リタイアとなる。
これでマルケスが2番手以下に1秒以上のリードを取って単独トップに。2番手にアレックス・リンス(ホンダ)が続き、3番手以下は10台以上のマシンによる接戦が展開される。マルケスはその後もリードを広げていくが、8周目にラインを外し、リンスが接近。トップ争いはマルケスとリンスのチームメイト同士のバトルとなる。リンスは11周目の13コーナーでマルケスをかわしてトップに浮上。しかし、続く12周目にマルケスがトップを奪回し、テールtoノーズの接戦を繰り広げる。この時点で後続の集団を抜け出したミゲール・オリビエラ(マヒンドラ)が単独3番手に浮上していた。
接戦が続くかと思われたトップ争いだが、リンスが遅れ、再びマルケスが単独トップとなる。リンスはオリビエラにも背後に迫られ、レース終盤に入って2番手争いはリンスとオリビエラのバトルとなる。17周目にオリビエラがリンスをかわして2番手に浮上。リンスも僅差でついていく。
終盤、3秒以上のリードを2番手争いの二人に取ったマルケスはそのままトップでチェッカーを受け、前戦カタルニアに続いて2連勝を記録した。2番手争いは最終ラップまで接戦が続き、最終ラップの最終シケイン進入で前に出たリンスが2位でゴール。ホンダのチームメイト同士がワンツーフィニッシュを飾った。3位にオリビエラが入賞。オリビエラは今シーズン初表彰台を獲得。昨年のマレーシアGP以来となる3位入賞となった。
最終ラップまで7人のライダーによる接戦が続いた4番手争いはアレックス・マスブー(ホンダ)が制して4位入賞。5位にニッコロ・アントネッリ(KTM)。6位にエフレン・バスケス(ホンダ)。7位にイサック・ビニャーレス(KTM)。8位にダニー・ケント(ハスクバーナ)。9位にブラッド・ビンダー(マヒンドラ)。10位にジョン・マクフィー(ホンダ)が入賞した。
ポイントリーダーのミラーがノーポイントに終わったことで注目されたポイントランキングだが、ランキング2位のフェナティは1周目のコースオフから4番手争いの集団に加わっていたものの、14周目に転倒。再スタートしたが18位ノーポイントに終わり、ミラーが117ポイントのままランキングトップを守った。フェナティも110ポイントから変わらずランキング2位、マルケスが110ポイントで同ポイントのランキング3位に浮上。リンスが107ポイントでランキング4位に続いた。