ヤマハには今こそV4エンジンが必要だ!
2025/04/21
華麗なマルク・マルケスが注目を集める中、近年のグランプリレースにおけるヤマハライダーの好調ぶりは見過ごされがちだ。第3戦アメリカズのスプリントでは、ファビオ・クアルタラロが近年屈指の好成績となる6位でフィニッシュ。日曜日のレースではプラマックカラーのYZR-M1を駆るジャック・ミラーが5位でゴールした。第4戦カタールではクアルタラロがフロントロウを獲得し、その実力を見せつけた。さらにスプリントではドゥカティ車以外の最上位の5位でフィニッシュ。ヤマハのV4エンジン導入派の後押しをした。
しかしエンジニアの現実主義は冷静な判断を迫る。現在のL4エンジンと同等以上の競争力を確認せずにV4エンジンを投入するのは、非常に大きなリスクを伴う。ヤマハは可能な限り迅速に開発を進めているが、開発というのは時間がかかるものなのだ。
V4エンジンはセパンでのプレシーズンテストですでに実現したが、走行時間は少なかった。しかし優遇措置を使って4月15日から二日間にわたってバレンシアで行なわれたプライベートテストでは、V4エンジンは多くの周回を数えた。強風と寒さという気象条件がテストに大きな影響を与えたが、これは現行マシンの改善作業の方が苦労させられた。すでに耐久性テストの段階に入っていることから、V4エンジンは夏休み前に登場する可能性が高い。アウグスト・フェルナンデスが第5戦ヘレスGPを皮切りに、六つのグランプリにワイルドカード参戦することがすでに確定している。
V4エンジンの使用は、現在のL4仕様が抱える二つの大きな問題、すなわち空力とトラクション不足を解決する必要がある。
空力抵抗には二つのパラメーターが影響する。一つは空力係数で、物体周囲の空気の流れやすさを表わす。もう一つは前面投影面積で、物体の正面から見た表面積を指す。空気抵抗には、空気抵抗係数よりも前面投影面積の方が大きな影響を与える。同じ出力の場合、前面投影面積が小さいV4はL4よりも空力的に優れている。
つまり、ヤマハは空力不足を補うために、このカテゴリーで最もパワフルなエンジンを搭載する必要があるが、現実的ではない。仮にその優位性が存在しても、理論上だけでなく実践で活用できなければ意味がない。現在のトラクション問題を考えると、より協力なエンジンは現場のテクニカルスタッフにとっては悪夢となるだろう。
近年のMotoGPマシンの驚異的な進化は、L4構成に代償を強いてきた。もはや、その長所では補うことができない。確かに、すべてのシリンダーを同じバンクに配置することで、V4よりもフロントに重量を集中させることができ、これがヤマハのフロントエンドの卓越したキャラクターを生み出している。
その代償としてリアエンドの重量が不足している。これが現在のヤマハライダーの最大の悩みだ。彼らが「トラクションがない」と訴えるのは、まさにこの点だ。加速時にリアに十分な重量がかからないため、M1のリアタイヤが滑り、ライバルよりもタイヤの消耗が激しくなる。ヤマハのパフォーマンスがレースよりもスプリントで優れているのは、それが理由だ。トラクションコントロールのセッティングでスピンを軽減することは可能だが、電子制御の干渉が強まるとパワーが低下する。
L4エンジンがヤマハを追い詰めた状況は、もはや克服不能に思える。まるで、彼らの前に乗り越えられない壁が立ちはだかっているようだ。第4戦カタールGPのレース後に落胆したアレックス・リンスの言葉が、それを完ぺきに説明している。
「ライダーにこれ以上を求めることはできない。状況は苛立たしい。明らかに遅いライダーの後ろを走っていたのに、追い抜くことができなかった。ストレートでは右と左から同時に抜かれた。本当に悔しい。もうこれ以上何もできない。エンジニアたちが何かをする番だ。私たちにこれ以上のことを求めることはできない」
今こそ、V4エンジンが必要だ。
(マニュエル・ペチーノ)
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