MotoGP第9戦ドイツGPは、ドイツのザクセンリンクサーキットで決勝レースを行なった。決勝レースは、Moto3クラスとMoto2クラスはドライコンディションで争われたが、MotoGPクラスのスタート前に天候が急変。上空は黒い雲で覆われ始め、サイティングラップが行なわれる段階では雨が降り出したため各車レインタイヤを装着してコースイン。レースはウエット宣言がなされた。
ところが、グリッド上ではスリックタイヤを選択するライダーもおり、スタート進行の間に路面状況は改善。多くのライダーがウオームアップラップを終えてグリッドに着かず、ピットに入ってスリックタイヤを履いたマシンに乗り換えてスタートすることを選んだことで、がら空きのグリッドからスタートが切られ、ピットロードエンドは大混乱となった。
MotoGPクラスは、マルク・マルケス(ホンダRC213V)が優勝した。サイティングラップ後のグリッド上ではステファン・ブラドル(ホンダRC213V)、青山 博一(ホンダRCV1000R)、カレル・アブラハム(ホンダRCV1000R)が、天候の回復にかけてスリックタイヤに交換した。
全車がスタートに向けてウオームアップラップを行なったが、グリッドに戻ってきたのはブラドル、青山、アブラハム、コーリン・エドワーズ(フォワード-ヤマハ)、エクトル・バルベラ(アビンティア)、ダニロ・ペトルッチ(ART)、ブロック・パークス(PBM)と、ピットレーンからウオームアップラップに向かったマイク・デ・ミオ(アビンティア)とマイケル・ラバティ(PBM)のみ。
マルク・マルケス(ホンダRC213V)、ダニ・ペドロサ(ホンダRC213V)、アレックス・エスパロガロ(フォワード-ヤマハ)、ホルヘ・ロレンソ(ヤマハYZR-M1)、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハYZR-M1)、アンドレア・イアンノーネ(ドゥカティGP14)、ポル・エスパロガロ(ヤマハYZR-M1)、ブラッドリー・スミス(ヤマハYZR-M1)、アルバロ・バウティスタ(ホンダRC213V)、アンドレア・ドビジオーソ(ドゥカティGP14)、ニッキー・ヘイデン(ホンダRCV1000R)、ヨニー・ヘルナンデス(ドゥカティGP14)、スコット・レディング(ホンダRCV1000R)、カル・クロッチロウ(ドゥカティGP14)はグリッドに着かずにピットに戻り、スリックタイヤを装着したマシンに乗り換えてスタートを切ることになった。
グリッド上に並んだライダーがスタートを切ってからピットロードオープンとなるため、狭いピットロードの出口に4列ほどの列で並んだライダーが、グリッド上からスタートを切ったライダーの後を追うように続々とコースインする異例のスタートとなった。
グリッドからスタートしたライダーが順当に1周目を終え、トップで戻ってきたのはブラドル。ブラドルは5周目までトップをキープするが、ピットロードスタートのマルケスが3周目に3番手、4周目には2番手に浮上し、6周目にはブラドルをかわしてトップに立つ。同様にペドロサも7周目にはブラドルをかわして2番手に浮上。ここからマルケスとペドロサによる接近戦のトップ争いがスタートする。
周回を重ねるごとに少しずつペドロサとのギャップを広げたマルケス。しかしレース前半を終えた11周目には、コンマ6秒まで広がった差をペドロサが再び縮めていく。17周目にその差はコンマ4秒まで縮まったものの、ペドロサはマルケスに勝負をかけるには至らず、終盤に入ると再びその差が広がっていく。マルケスは最終的にペドロサに1秒4の差をつけて今シーズン9勝目を達成。天候の影響で難しい展開となったレースで、連勝記録を9に伸ばすことに成功した。
2位にペドロサが入賞。10周目に3番手まで浮上したロレンソがそのままポジションをキープし、トップ争いの二人からは大きく遅れたものの3位に入賞した。同じくピットスタートから追い上げたロッシが4位に続き、5位にイアンノーネ、6位にアレックス・エスパロガロ、7位にポル・エスパロガロ、8位にドビジオーソ、9位にバウティスタ、10位にクロッチロウのトップ10。
レディングが11位に入賞。スタートの時点でスリックを選択した青山は、1周目を4番手で戻ってきたものの最終的に12位フィニッシュとなった。同じく、最初からスリックを選択したアブラハムが13位。ピットロードからスタートしたヘイデンは14位、ペトルッチが15位に入賞した。
序盤こそトップを争ったブラドルは、グリッド上でタイヤ交換はしたものの、サスペンションのセッティングまでドライ用に変更ができなかったことから中盤以降苦戦し、16位でチェッカーとなった。ホームレースで勝負に出たものの、目論見は外れてしまった。17位にヘルナンデス、18位にバルベラが続き、4周目に転倒を喫したスミスは再スタートして19位でゴール。エドワーズが20位、パークスが21位、デ・ミオが22位。ラバティは8周目に転倒を喫してリタイアに終わった。
Moto2クラスはドミニク・アガター(スーター)が優勝した。Moto2クラスの決勝は気温22度、路面温度34度のドライコンディションで争われた。ポールポジションからスタートしたアガターはスタートからトップに立つが、2周目にミカ・カーリョ(カレックス)にかわされてしまう。しかし、ここから最終ラップまで、アガターとカーリョが後続を引き離してテールtoノーズの僅差のトップ争いを展開。29周のレースの26周目の1コーナーでアガターがカーリョの前に出るが、その周の最終コーナーではカーリョがトップを奪還する。しかし、ぴたりとカーリョの背後につけたアガターは最終ラップの12コーナーでカーリョをかわしてトップに立ち、そのままグランプリ初優勝を達成した。0秒091差の2位にカーリョが続いた。
トップ争いの2台が抜け出した後、シモーネ・コルシ(フォワード・KLX)、フランコ・モルビデリ(カレックス)、エステブ・ラバット(カレックス)の3人が序盤から3番手争いを展開する。レース序盤が終了する10周目あたりではコルシが一度は抜け出すかに見えたものの、ラバットがモルビデリをかわして4番手に浮上するとコルシとの差を縮め、レース中盤過ぎには追い上げてきたマーベリック・ビニャーレス(カレックス)を加えた4人による3位争いが展開される。この中から終盤にモルビデリが遅れ、ラバットが3番手をキープしていたが、最終ラップのゴールライン直前でコルシが前に出て3位でゴール。僅差の4位にラバットが続き、ビニャーレスは5位でチェッカーを受けた。モルビデリは単独6位でゴール。
7位にランディ・クルメナヒャー(スーター)。8位にマティア・パッシーニ(フォワード・KLX)。9位にトーマス・ルティ(スーター)。10位にハビエル・シメオン(スーター)の順で続いた。中上 貴晶(カレックス)は21位、長島 哲太(TSR)は22位でチェッカーを受けた。
Moto3クラスはジャック・ミラー(KTM)が優勝。Moto3クラスの決勝は気温21度、路面温度33度のドライコンディションで争われた。スタートからトップに立ったミラーは、2周目に2位以下に約コンマ6秒のリードを取って、独走態勢に持ち込むかと思われたが、逃げ切ることができず、レース序盤から終盤まで5人によるバトルが展開される。
序盤にミラーに続いたのはアレックス・マルケス(ホンダ)。マルケスは3周目にミラーの背後につくと接戦を展開したものの、前に出るには至らない。レース中盤にはブラッド・ビンダー(マヒンドラ)、アレックス・マスブー(ホンダ)、ダニー・ケント(ハスクバーナ)が追いつき、トップ争いは5台の集団となる。この時点で6番手以下とは大きな差が開いていた。15周目にビンダーが2番手に浮上。トップ争いはミラーとビンダーの二人のバトルとなり、マルケス、マスブー、ケントの3人が3番手を争う。しかし、終盤に差し掛かるころにはトップ集団は再び5台のバトルとなった。
残り6周で再びミラーとビンダーのトップ争いが開始。やや離れてマルケス、マスブー、ケントの3人の3番手争いとなり、最後はミラーとビンダーの一騎打ちとなる。しかしビンダーはミラーに仕掛けることができず、ミラーがスタートからトップの座を一度も渡さず、ポールtoウインで今シーズン4勝目を飾った。
2位にビンダーが続き、グランプリ初表彰台を獲得。3番手争いは26周目の最終コーナーでマスブーが前に出て、今シーズン初表彰台を獲得。4位にマルケス、5位にケントの順となった。
レース序盤からトップ争いの集団に大きく離された6番手争いは、中盤過ぎまでカレル・ハニカ(KTM)がリードしていたが、18周目にミゲール・オリビエラ(マヒンドラ)が前に出る。しかし、20周目にハニカが転倒し、これに巻き込まれたオリビエラも転倒。両者リタイアに終わった。これでニッコロ・アントネッリ(KTM)が6番手争いの先頭に立ったものの、レース終盤の25周目の1コーナーでアントネッリも転倒しリタイア。17番グリッドから追い上げたエフレン・バスケス(ホンダ)が6位に入賞。7位にジョン・マクフィー(ホンダ)、8位にイサック・ビニャーレス(KTM)、9位にマッテオ・フェラーリ(マヒンドラ)、10位にファン・ゲバラ(カレックス‐KTM)と僅差で続いた。
チャンピオンシップではミラーが142ポイントでランキングトップをキープ。マルケスが123ポイントでランキング2位に続く。このレースをランキング2位で迎えたロマーノ・フェナティ(KTM)は、4周目に転倒リタイアを喫したことで110ポイントのランキング4位に後退。バスケスが112ポイントのランキング3位に浮上した。また、アレックス・リンス(ホンダ)も1周目に転倒リタイアに終わった。