レース1:熾烈なトップ争いを展開し、レオン2位、渡辺3位
レース2:レース1に続きレオンは2位表彰台、渡辺はアクシデントでリタイア
最終戦・MFJ-GPの舞台は鈴鹿サーキット。予想外の激しい雨に翻弄された第8戦に対し、レースウィークに入った木曜日から決勝レースの日曜日まで、雲ひとつない快晴となった。土曜日の予選は、Q1,Q2のノックアウト方式。Q1のリザルトでレース2の全グリッドが決まり、Q1の上位10台で競い合うQ2のタイム順でレース1のスターティンググリッドが決定する。
前日のフリー走行で2分6秒261のトップタイムをマークしたレオン・ハスラム選手はQ1のセッション後半に2分6秒611をマークして好調ぶりをアピール。そのレオンをさらに上回ったのが、渡辺選手で前日のタイムより速い、2分6秒599をマークしてそれぞれレース2での5番手グリッドと4番手グリッドを獲得した。
5分間のインターバルを置いてスタートしたQ2の制限時間はわずかに15分。渡辺選手は残り5分を切ったところで、2分6秒517とわずかながらタイムを伸ばしセカンドロウ5番グリッドとなった。レオン・ハスラム選手はセッション後半でフレッシュタイヤに交換すると、2分5秒689と一気に1秒近くラップタイムをアップ。わずかに0.15秒差でポールポジションこそ逃したものの、さすがの速さでファンを魅了した。
レース1は、わずか8周のスーパースプリントレース。駆け引きなしのスピード勝負は、オープニングラップからアクセル全開で攻める展開となった。予選で2分5秒台のタイムをマークしたレオン選手は、早くも2周目に中須賀選手(#1)をとらえトップに躍り出る。一方、セカンドロウ5番グリッドからスタートした渡辺選手はスタートダッシュで高橋選手(#634)をパスすると4番手でレースをスタート。2周目には2分6秒154のベストラップをマークして、津田選手(#12)の背後に迫る。さらに渡辺選手は2分6秒6~7の高いラップアベレージをキープ。トップ2台とほぼ互角のラップタイムを刻みながら、最高速で他を圧倒。309キロを筆頭に全ラップともに300キロ越えをマークするなどその存在感をアピールした。5周目には津田選手(#12)をかわして表彰台圏内にポジションアップ。抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り返すトップの2台を見ながら冷静にレースを展開し、トップ2台とのギャップを徐々に埋めていく。終盤にはトップ2台のスリップにつけるところまで追いついた渡辺選手だったが、スーパースプリントレースでは逆転ならず、3位でチェッカーとなった。
一方、トップに立ったレオン選手だったが、セクションごとに順位を入れ替えるほどのバトルを展開。第2セクターでレオン選手が優位に立つと最終セクションで中須賀選手がこれを奪い返すなど目を離せないレースとなる。6周目に再びレオン選手がトップに出たが、1コーナー飛び込みで逆転されて2位に後退。それでもレオン選手は再び猛プッシュして中須賀選手の真横に並びかけたが、一歩及ばずそのまま2位チェッカーとなった。
JSB1000クラスの第2レースは2016年度の全日本ロードレースを締めくくるラストレース。周回数は20ラップでレース全体の組み立てが重要なカギとなる。レース1で惜しくも3位になった渡辺選手だったが、そのアベレージタイムはトップ2台に決して引けをとらない速さで、このレースに照準をあわせて仕上げてきたといえる。好バトルを展開したレオン選手もターゲットとなるライダーの特徴をしっかりインプットして、レース2に臨んだ。
ところが、その二人にアクシデントが襲い掛かる。ホールショットを奪った加賀山選手が1周目の最終コーナー立ち上がりで転倒。レオン選手はこれを避けようとしたがバランスを失い転倒する。さらに渡辺選手もこれに巻き込まれてマシンは大破。渡辺選手もダメージを受けて、リタイアとなってしまった。このアクシデントでホームストレート上にパーツが散在し、レースは赤旗中断。20分ほどのインターバルを置いて、仕切り直しとなった。レオン選手も背中と右手首にダメージを受けたが、メディカルチェック後、予備のマシンに乗り換えてコースイン。フロントロウ・セカンドグリッドに並んだ。
リスタートとなったレースでオープニングラップを制したのは、アクシデントに遭遇したレオン選手。2位以降は、中須賀選手、津田選手、そして藤田選手(#15)とほぼ等間隔で続き、前半を展開する。レオン選手のペースは2分7秒台。最高速は終始300キロオーバーをキープして、隊列を引っ張っていく。5周目のシケイン侵入で津田選手が転倒し順位を落としたため、レースの折り返し10周目のオーダーは、レオン選手、中須賀選手、野左根選手(#7)、高橋選手(#634)の順となり、この4台がトップグループを形成。レオン選手はこの周回でレース中のベストラップ2分7秒288をマークしている。
レースが動いたのは15周目。レオン選手の背後についていた中須賀選手がスリップストリームを使って前に出るとわずかながら引き離しにかかる。残り周回数から逆転するには厳しい状況となるが、レオン選手は果敢にプッシュ。野左根選手をかわして3位に浮上してきた高橋選手をけん制しながら、最終ラップまでトップを猛追したがわずかに及ばずレース1に続き、2位でチェッカーを受けた。
結果、レオン選手はスポット参戦ながら1日で50ポイントを獲得。レース2をリタイアした渡辺選手は累計126ポイント、ランキング6位で2016年シーズンを終了した。また第8戦、第9戦でポイントを加算できなかった柳川選手は、74ポイント12位で今季の幕を降ろした。
渡辺 一樹のコメント
今シーズンは新型マシンと対話できるようになるまでに時間がかかりすぎましたが、最終戦を迎えて、ようやく「自分のもの」にすることができ、予選でも十分手ごたえを感じることができました。レース1ではトップ2台にあと一歩及ばず。それでもレース中のベストラップを奪い、第8戦に続き表彰台の一角に登れたことはうれしく思っています。第2レースではアクシデントに巻き込まれリタイア。スタッフやファンの方々に優勝をプレゼントしたかったのに、こんな形で2016シーズンを終えたことは悔しくて仕方ありません。大きなアクシデントでしたがフィジカルダメージは意外なほどに小さく、シーズン中ならすぐにでもマシンに乗れるほどです。最後になりましたが、この1年応援ありがとうございました。
レオン・ハスラムのコメント
8時間耐久レースでチームグリーンのスタッフ、ライダーとともに戦い、再び「日本で走るチャンスがあるならばぜひ走りたい」と伝えていました。最終戦にそれが実現し、とてもうれしく思っています。BSB,SBKとキャラクターの違うマシンを乗ってきましたが、短期間にも関わらずスタッフのおかげでポテンシャルの高いマシンに仕上げることができました。優勝こそできませんでしたが、2ヒートともにその能力を十分発揮できたと思います。またこんな機会があればぜひ日本で走ってみたいと思います。ありがとうござました。
釈迦堂監督のコメント
最終レースを迎え、ようやく表彰台の真ん中を狙える体制になったと思います。渡辺選手は走るたびに安定した速さを見せ、順調さをアピール。第1レースでその手ごたえを感じ、第2レースで今シーズンの集大成として優勝を奪うという筋書きでしたがアクシデントにまきこまれ目標は達成できませんでした。幸いダメージは小さく、みなさまのご心配に心より感謝しております。レオン選手の参戦は、レース結果だけでなくチームにいろんな刺激を与え、次年度につながる大きな財産になったと感謝しています。惜しむらくはもう1日あれば、結果も大きく変わってきたと思いますが、Kawasakiファンの声援には十分お答えできたと自負しています。この1年は天候不良や震災などの影響もありマシンを熟成させる時間が短く苦労しましたが、これもまた来シーズンへの確かなステップになったと確信しています。応援ありがとうございました。