人とのつながりで仕事を続け、独立できた。

鶴野：この会社を始めたのが1993年。

バブル後のどん底ともいえるころでした。

周りの人はみんな止めてくれたけど、僕はバカだったから。

言うことを聞いておけばよかった（笑）。

中西：立派に続けていらっしゃるじゃないですか。

そのときは、まだブランドとしてやっていたわけではなかったんですね。

鶴野：RS125やレース専用車両、勤め人だったときにやっていた仕事をいただきながら独立しました。

そうやって仕事を受けさせていただいて、元世界GPライダーのK&T（高田孝慈）さんのお仕事などもやらせていただきましたね。

鈴鹿という地でローカルなつながりで仕事をいただいて、シンプルなものから作らせていただいてきました。

鈴鹿で言えば、オーバーレーシングさんやTSRさんなどからもお声がけいただけるようになって。

小さくてもいいからメーカーになりたい、そう思って続けていました。

事業を始めるとき、レースをやめるか、事業に専念するか……自分のなかでは51：49くらいで……。

専属でやってもらえるなら仕事をお願いしたいと言ってくださるところもあって、レースは一旦置いて事業に専念しました。

そうこうしているうちに、一緒に働いている子がNSR50を持って来たんです。

それを見て小さいけどかっこいいなと思った。

当時そのマシンでのワンメイクレースがありましてね。

青木兄弟の活躍なんかもあって、ミニバイクが流行っていたんです。

ミニバイクライダーが本当に速かった。

青木拓麿くんなんかは予選で一緒だったけど、すごく速かったですね。

何が違うの？って驚くくらい。

NSR50を貸してもらって一緒にレースに出てみたら、女の子にもついていくことができず、どうしてそんなに早いの？　何をやってるの？　そう思って、よく見るとノーマルのステップをカットしたりして工夫していた。

僕は125ばかり作っていたからか、その不安定なステップでどうやって走るの？って。

自分も走るようになると、どうして売りもののステップがあるのにみんな買わないの？と不思議でしたね。

ノーマルステップのポジションも小さいバイクだから悪くはないんです。

ただ、ノーマルだけどバンク角を増やすってことでカットしたり、皆工夫をしていて。

使えるお金にも限りがありますから、何もかも買うことはできないんですよね。

それで、「純正品より安く」と作ったのがうちのオリジナル製品の第1号です。

NSR50用のステップキットでした。

フルキットで完結するようなセットにすると（プレート、ステッププレート、ステップバー、ペダル）全部揃えたら高いんですよ。

製品としては機種展開をするなかで高価になってしまうのを避ける意味でも、純正ペダルを使用することにしました。

ステップを作る技術的なハードルもありましたが、ペダルは純正を使うことにして、できるだけ安価に販売できるようにしました。

何回転倒しようがパーツを補充してもらえるようにと、とにかく価格を下げたんです。

ノーマルよりも安くしました。

そのころだとモトチャンプのマルチ杯などでライダーがかなり出てきました。

そういうところで、サポートライダーの中村敬司くんや、モトチャンプの岸田くんも、うちの商品を使わせてほしいと言ってくれましてね。

他者さんがやっているような大きなカスタムバイクでは商売もバッティングしてしまいますし、とはいえOEMだけでは食べていけない。

そんななかでも、鈴鹿でいろんな方がかわいがってくださってなんとかやってこられました。

中西：僕もTSRさんで車両を作っていただいて走っていたんですが、いま思い出しました。

ステップ、こちらのものでした！

鶴野：ありがたいことに、頑張って仕事を続けていたので、お前のところがやるんだったらと仕事をもらうことができていました。

本来ならオーバーレーシング、TSR、モリワキ……みんなライバルですが、うちで製品を作ってくれと言ってもらえたんです。

技術力を認めてもらえたのかなと嬉しかったですね。

モンキーもやりましたし、ミニバイクをやって、総合的に全ブランドのバイクまで手は回らないのが現実ではありましたが、細々とOEMの仕事を日本全国からいただき、なんとか工場はやりくりできるようになっていきました。

レースはミニモトを皮切りに、そこからCBRカップ（250cc）を始めました。ミニモトもね、僕らの年齢になると体重も落ちないでしょう？（笑）増えることがあってもね。

中西：僕も同じです。ミニモトでは勝てないです（笑）

鶴野：体重が勝負になるクラスは正直しんどい。

CBR250RR買ったら敬司（中村）くんもライセンスとってやり始めて。

そこからの付き合いなんです。

でも、結局CBRカップも同じで体重が勝負でした（笑）。

中西：わかります。ダンロップとかのぼらないですよね（笑）