代表の鶴野氏は、レースに対する熱い思いを、そのまま製品へと注ぎ込み、TTSでしかできない「ホンモノ」を世に送り出している。
お世話になった方々と肩を並べたい。
鶴野:お世話になったオーバーレーシングさん、TSRさんなどと、いつか並ぶことができるくらいのブランド力を持ちたいという夢を持って、少しずつステップアップしていきたいと思い、事業の方も進めてきました。
サーキットでは友人たちもできて、うちの製品をたくさん買っていただくことができましたね。
ST250では、KAWASAKI Ninjaが強く、アジアも賑やかになってきたので、R25や、ホンダの新しい二気筒、スズキも出しているので、アジアを見据えて250を攻めようという風に考えました。
CBR250RRでレースして、お客さんとコミュニケーションをとることができて、製品を広めていくこともできました。
ブランド力も少しずつついてきて、「ミニモトならTTS」とわかってもらえるというレベルになってきたと感じていました。
そこで敬司くんとCBRをやって、さらにNinjaでST250はじめたとき、ST600を走り始めました。
一緒に耐久に出たんです。2014年でしたね。
中西:600ccはどうでしたか?
鶴野:600は怖かったですね。実は春にシェイクダウンして4耐を走り、その後脳梗塞になってしまったんです。
練習でも脱水症状などいろいろあったからなんですかね? 原因は分からないけど、レースは諦めて療養しました。
運良くバイクに乗れる程度の後遺症ではあるんですが。
左半分には麻痺が残っています。600はタイヤも溝付きで、危ないからやめようって(笑)脳梗塞になってなかったら、8耐に出されてそれはそれで危なかったかもしれないですね(笑)
中西:夏の4耐の暑さ、ハンパないですからね。
鶴野:夏の鈴鹿の暑さは今も昔も本当にハンパないですね。
体質なのか以前からコレステロール値は高くて、気にはしていましたが、600でも朝から晩まで練習走行できるくらい体力に自信があったので、病気になるなんて考えたこともなかったんです。
2014年春にシェイクダウンして、8耐までにタイムアップしようと頑張っていましたが、最初は2分30秒オーバーと惨憺たるタイムでした。
中西:僕も最初は30秒切れませんでしたね。
鶴野:手伝いにきた人が最終コーナーを降りてくる僕の姿を見て大笑いされて。怖くてもう縮こまってフラフラしていたんです。
そのとき頑張りすぎましたね。
一緒に走っている相方は16秒、14秒台を出していてめちゃくちゃ速かったんですよ。
中西:相方が速かったら頑張りますよね。
鶴野:ミニバイクから一緒にやってきてるから、4耐に出るなら600のパーツも作ろうよということになって。
でも病気でバイクを降りることになった。
その年にインターに上がったんです。
敬司くんのペナルティがなかったら6位やったのに、14位という結果で(笑)。
不完全燃焼でした。でも本当に怖かったですね。
泣きながらスロットル開けてました(笑)でも思い切って開けたら転ぶし……。ちょうど難しくなってくるクラスで、体重で勝負が決まるクラスではないので、ちょうどよかったんですよね。
今年も8耐(鶴野氏は監督)をやったんですが、耐久レースというのはライダーだけじゃ勝てない。
チームワークの重要なレースなんです。
ミニモトもそう。
だから好きなんですね。
8耐に参戦したのは、日本国内でのレースというと8耐が最高峰だと思っていたからというのもあって、いつかはやはりTTSカラーで8耐を走らせたい。
そういう思いがあって、2016年に初参戦しました。中込さんやコハラレーシングさんと一緒に。佐藤太紀、渥美心、中村敬司でチームを組みました。
250のころに心とは一緒に走ったけど、バトルする前に彼は転ぶ(笑)本当によう転んでくれました。太紀も心も(笑)
中西:今年のマシンはカラーリングのイメージも変わりましたね。
鶴野:今年は一回目の参戦で協力してくれたspeed Heartさんがメインスポンサーとなってくれて、参戦しました。
ライダーは中村敬司、國川浩道、中村修一郎の3名。
結果は27位完走でした。
いまは、会社として考えると、なかなか従業員も取ることが難しいですが、大卒を毎年入れていたときは、みんなユーザーでした。
大学でミニバイクレースをしていた子なんかが多くてね。
それでレースが好き、製造業が好きということで集まってきて。
みんなバイクが好きだから、手が器用な子はピットに入れてレースしてきましたね。
ミニバイクでは女の子もピットに入れていました。
全員でチームとしてやっていましたから、結束力が高まる。耐久レースの魅力はそこです。
若い子が地元に帰ってTTSで働いてるってことを友人に自慢しているなんて話しを聞くと嬉しくてね。
会社としてはレースを福利厚生的に使ってもらって、みんなで盛り上げ、チームワークを高めていき、それを仕事にフィードバックしていく。
ここまでレースをしてきたのも、本当に使えるものを作りたい。
コンセプトは「ホンモノ」を作りたいということなんです。
それを自分でも使って結果も出す。
そうすることで、お客さんへの対応もすごくラクになりますしね。
今年はお客さんからの開発、設計も請け負うようになり、オリジナルパーツの販売もしています。
実はMotoGPマシンの部品も作っているんです。
そういうものを作れる会社だということは働いている皆にとってもモチベーションになりますよね。
世界最高峰の仕事は妥協が一切ないので、自ずと技術力も上がっていきます。
通常ユーザーにはオーバースペックで違いがわからないような贅沢な作りでも、アジアなど諸外国ではできない、日本人の我々ならではの突き抜けたところで勝負したいと思って、8耐、CBR1000RRでの技術をすべて惜しみなく投入しているのが、TTSの製品なんです。
TTS Racing ツルノテクニカルサービス
代表の鶴野浩さん自らレース活動を積極的に行ってきたTTS Racing。
従業員の方々もレースやTTSの製品を使用して入社してきた人ばかりだ。
レース向けのバックステップやハンドル、ほかさまざまなオートバイ関連用品を制作するTTSというブランドは、鶴野氏自身のレース活動からフィードバックした技術を盛り込んだ数々の製品は、「ホンモノ」を提供したいという鶴野氏の言葉通り、レース活動を行うライダーを中心に非常に人気が高い。
三重県鈴鹿市住吉町字宮西8299
TEL:059-375-0955
https://store.ridingsport.com/shop/ttsracing/index.html
写真:大西としや