日本をはじめとする世界各国の都市では、慢性的な渋滞や駐車場不足など、さまざまな交通問題を抱えています。こうした中でスクーターに代表される小型の二輪車は、その手軽さや経済性、そして機動力の高さで、先進国、新興国を問わず人びとの都市内移動を支えています。
写真は、今年7月、ローマ市内にオープンしたスクーター専門のレンタルステーション(スマートベンチャー社/表紙の写真はその広告)。整然と並んでいるのは、フロント2輪を特徴とする125ccのオートマチックコミューター、ヤマハ「TRICITY」です。カーブの際に前輪がリーン(傾斜)する当 社独自のLMW(リーニング・マルチ・ホイール)機構を搭載したこのモデルが、いま、その安定感や親しみやすさでローマ の近距離移動に一陣の風を吹き込もうとしています。
「イタリアの都市では、近年、自転車やスクーター、自動車などのシェアリングが広がりを見せています。背景には公共交通機関などインフラの不整備があるのですが、各自治体でも駐輪場無料化やバスやタクシー専用レーンの走行許可といった施策を打って、シェアリングの普及を後押ししています」と話すのは、YMENV※1イタリア支社のダニエル・ザノッティさん。ローマやミラノといった大都市にはスクーター専門のシェアリング業者が複数存在し、ローマ市内だけでも 500台ものレンタルスクーターが市内を走っているそうです。
そのうちの一つ、スマートベンチャー社は、4人の若者たちによって起業されたTRICITY専門のシェアリング業者です。起業にあたってはシェアリングビジネスの市場傾向を徹底的に分析し、その成長のポイントを誰もが気軽に利用できる親しみやすさに重点を置いたことから、「見た目にも安定感のあるTRICITYに着目した」そうです。ご存知のとおりローマ市内は石畳の道路も多く、こうした観点からも安定感を持ち味とするLMWの性能が期待されています。すでに130台のTRICITYがローマ市内のステーションに配備され、近日中にはさらに50台が追加されることになっています。
利用の方法はいたってシンプル。専用のアプリにあらかじめ決済情報などを登録しておけば、車両の位置情報や予約までスマートフォンを片手に完結できます。さらに利用者が予約車両に近づくと自動でロックが解除され、そのまま車載のヘルメットを被って走り出すことが可能です。また、目的地に到着したら近くの公営駐輪場などに乗り捨てられる手軽さも人気の要因の一つとなっているようです。
現在の稼働数は、一日あたりおよそ80回。平均の使用時間は25分と、市民の近距離移動で活躍している様子がうかがえます。また、利用者の平均年齢は37歳、約2割が女性であることから、幅広い層のローマ市民の移動手段となっていることは間違いなさそうです。
「TRICITYにまず反応したのは、各国でファッション感度が高いと言われる市場」と話すのは、当社MC※2先進国営業部の益崎達男さん。「イタリアではミラノが販売数を伸ばしていますが、たとえばシェアリングでLMWの機能やTRICITYの商品性を実感することで、購入したいと考えてくださる方も出てくるでしょう。たくさんの車両がローマを走ること自体が 宣伝にもなりますし、シェアリングの普及は販売にも好影響を与えるはずです」と、期待感を込めて話してくれました。
※1 YMENV= Yamaha Motor Europe N. V. 欧州における当社の統括会社
※2 MC= Motorcycle
(ヤマハ発動機 Monthly NEWS LETTER)